KNS日記

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シア・クーパー/アーサー・アインスバーグ 著

 
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 MIRACLE : ミラクル           



  今回は院長です。

  ちょっと思うところがあって、
  この本を読み返してみました・・・ 





糖尿病をご存じの方でも、その中で、1型糖尿病という病気がどんなものか、1型糖尿病の治療において、
インスリンの発見がどんなにすばらしい奇跡であったのかは、イメージし難いかもしれません。


・・・最近の理研騒動を見ても、新しい治療の発見に伴う、様々な思惑(あるいは利権)は問題になっています。


 インスリン ―その時代においては奇跡に等しい薬剤― が発見された時の、その研究者たちの葛藤。

 当時の医学知識の中で、必死で患者さんの命を保とうとしてきた臨床家たち。

 突然病気になってしまった方たちと、そのご家族。 

この本は、そういった苦しみや葛藤を、それぞれの立場からオムニバス的に書いています。


・・・研究者や医療従事者に対するイメージを、「聖職」ととらえると、違和感(あるいは多少の不愉快)を
   覚える部分もあるかもしれません。  しかしこの本は(共感が得られるかどうかは分かりませんが)、
   研究に携わる者、今得られる情報の中で、患者さんの命を保つためにもがく医師の実際の姿。
   そしてそういった医療従事者の、一人の人間個人としての人生の行き先が、鮮明に描かれています。


1921年にインスリンが発見されるまで、1型糖尿病は、すぐにも愛する者を奪いかねないほどの病でした。
当時は、数日でも長く命を保つために、極端なカロリー制限によって、栄養失調になるほどの
食事療法が行なわれていました。
しかしそれも、成功する方はごくわずかで、そうそう持続できる治療法ではありません。


 インスリンが発見されたミラクル。

 11歳で発症したエリザベス・ヒューズが、飢餓療法と言われるその時代の治療を3年間継続できたミラクル。

 発症からインスリン発見まで、エリザベスが生きていたミラクル。

 その家族がインスリンを知り、まだ安全かどうかわからないまでも、娘に何とか使いたいと思い、
 あらゆる努力を惜しみなく行なったミラクル。

 当時はまだ使用例も少なく、安全は保持されていなかったにもかかわらず、彼女がインスリンの使用を開始し、
 その後結婚され、3人のお子さん、お孫さんをもうけ、様々な事情によって糖尿病であることを隠しながらも、
 1981年まで寿命を全うされたミラクル。

全てのミラクルの影には、その時その時の自分にできることを精一杯やっていこうとする方々の
不断の努力がありました。


  “いつかはきっと”、 “いずれ” ではない “今”こそ、先の事を考え、できる何があるのか…


今の治療に何の意味があるのか…と考える方も、これから先どうなるのだろうか…と悩まれる方も、
おそらくたくさんいらっしゃると思います。
ご病気をされている方やご家族だけではありませんし、私自身も同じです。

悩みながらも、今できる事にベストを尽くす人に、ミラクルは訪れるかもしれませんし、
あるいは、誰かのためにミラクルを起こす力になるのかもしれません。

頑張ろうという言葉は、言われる状況によって、感じ方も受け止め方も違います。
この本はただ淡々と事実を書いていますが、“人生って頑張っていたら、すごいミラクルがあるかもしれないよ
と教えてくれている気がします。
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by 20121203inoue | 2014-05-24 20:41